府中是政の多摩川のほとりに、16坪の小さな住宅が完成しました。敷地は木立のある緑地に隣接し、道路を挟んだ向かいには公園やバスロータリーが面します。
与えられた命題は2つ。1つは狭小であること。
もう1つは、およそ10年後を目安にクライアントは他の場所に移り住み、この住宅は人に貸す予定であること。
限られた敷地内で完結した庭を形成することよりもむしろ、南側採光にこだわらず、緑地や公園が広がる東側・北側に開くことで、より豊かな外部空間を「借景」しています。建物内部の活動が周辺環境と相互に関係を持てるよう、緑地に張り出したデッキテラスや、空を仰ぐ開放的なルーフテラスを設けました。ルーフテラスからは広大な多摩川の河川敷を一望できます。ほぼ中央に配置された階段により、4つのスペースがつくられ、ライフスタイルの変化に対応し得るプランとしています。かつ、見通しのよい構成・しつらえにすることで、より豊かな空間の軌跡が感じられます。
適材適所、大工の手仕事による造付け家具を設け、収納量の拡大を図ることで、活動できる床面積を最大限担保しました。壁厚を利用した掘込み式の「凹型家具」は、室内に出っ張ることなく、壁の一部としてデザインされています。プリミティブに周辺環境と対峙し、慎重に配置された3つのボリューム構成が、建築の寿命を迎えるまでのサスティナビリティを約束する。「持続型狭小住宅」のひとつのプロトタイプとして提案したものです。現在の家族構成は、若い夫婦2人と乳幼児2人の4人家族。この住宅を取り巻く環境が、幼少期を過ごす子供たちの原風景となることを願っています。
■住宅 是政ハウス 東京都府中市 2007.07
構造規模 | 木造在来構法、地上2階建て |
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敷地面積 | 53.74m2 |
建築面積 | 26.83m2 |
延床面積 | 53.70m2(16.27坪) 1階 26.05m2 2階 25.18m2 R階 2.47m2 |
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